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私たちの出前授業45×2

報告:第254回(17‐04月)済生会新潟第二病院 眼科勉強会 小島紀代子 他

演題:「私たちの出前授業45×2 ~目の不自由な人の未来のために、子どもたちの“今”のために~」
講師:小島紀代子、小菅茂、入山豊次、吉井美恵子、三留五百枝
(NPO法人障害者自立支援センターオアシス)
日 時:平成29年04月12日(水)16:30 ~ 18:00
場 所:済生会新潟第二病院 眼科外来
http://andonoburo.net/on/5808

講演要旨

平成10年、「総合学習」が創設。地域の多様な立場の人と交流・体験を通し、「思いやりの心、生きる力」を育てる学びの場が地域に拓かれました。平成9年、オアシス主催「第1回学生、子どもたちのためのサマースクール」が、「目の不自由な人をもっと知ってもらうために」「誰もが誘導歩行できる社会に」を目指し開催、昨年20回を迎えました。

1.出前授業の変遷

 「見えない人の体験談・誘導歩行」の依頼を受け、双方が戸惑いながらの始まりでした。体育館で当事者が一人で語り、そのあと二人一組になり「誘導歩行体験」。子どもたちは、「見えないと怖~い。大変。だから道で会ったら助けようと思います。」の感想が大半でした。 
 私たちは、「総合学習」のあり方に疑問を感じ検討しました。・アイマスク体験は、怖い思いと「かわいそう」だけが残り、逆効果の恐れ。・ひとり語りは、特別な人に感じられ真の姿が届きにくい。そこで、①視覚障害者の全体像を伝えるために、「言葉」だけでなく「映像の力」を。②体験談は、一人語りからインタビュー形式に。③体験学習はグループ別に分けて行う 「誘導」、「機器や道具」、「弱視メガネ・白杖」。④障害者の差別偏見と「今」の子どもたちの問題から、『感じ・考える』授業に。

2.小学校4年生の最近の授業風景

1)~スライドを映しながら~
・視覚障害者の全体像(全盲・ロービジョン・中途・先天盲。見え方のいろいろ)。・オアシス物語(一人の自殺者と内科医師の取組み)。・目のリハビリテーション(こころのケア・歩行・調理・化粧・パソコン・機器・道具の訓練)。・オアシスの特徴(次の人のために教え合い、支え合う教室)

~目をつむっての体験~~
Q.もし君たちが見えなくなったらどんな気持ち?
A.隣の人がみえない、いやな気持ち。どこにいるかわからない、不安になる。
Q.見えなくなったら、何もできなくなるのかな?
・「みかんや物を触ってもらう」・・・他の感覚を使う。
・「自分の名前を書いてもらう」・・今までの経験の力を使う。

2)~インタビュー形式の語り~
当事者の以前の職業などを映し、子どもたちからスライドを説明してもらう。当事者の心の内をカミングアウトする。
Q.見えなくなって困ることは?
A.死にたくなった、つらかった、白杖が持てない、好きなこともある。元気になれたのはネ。
Q.見えなくなって、よかったことは?
A.「よいことなんか、ひとつもないけど、君たちに会えた」「小さいことにも感謝できる」「本当の仲間に出会えた」「パソコンができた」
@悲しみ・苦しみから、楽しみ、喜びなど、ありのままを真剣に語る当事者と聞く子どもたち。

3)~「パソコン・iPad・機器・道具」の紹介~
@子どもたちは、驚き、それを使い生活する当事者へ尊敬のまなざし。

4)~『考える』授業~
Q1.「もし、君たちのお父さん、お母さんが見えなくなって、白杖が持てないと言ったら?」
A.・僕が誘導するからいい。危ないから家族を説得する。オアシスに相談する。
・お父さんの誕生日に盲導犬をプレゼントする、それまでは仕方ない。
Q2.「もし君たちが見えなくなったら、白杖持てますか?」
A.(持ちたくないと答えた子)・だって見下されるから・恥ずかしいから・もちたくないから
(持つと答えた子)・仕方ないじゃん、生きていかなければならないから。
Q3.白杖と盲導犬だったら、どっち?
A.ひとりで歩くと淋しい、不安だから盲導犬を持つ・僕は白杖も盲導犬も持つ。
Q4.「点字ブロックは、車椅子の人には迷惑、視覚障害者には必要。どうしたらいいかな?」
A.「簡単じゃん・・・片方は車いす用に、もう片方は、点字ブロックを敷く。」

3.中学校 「いじめ」問題を意識しての授業

 重複障害で重い障害のAさんは、周囲に助けを求め仕事を継続。軽い障害のBさんは、周囲に助けを求めず隠していたため孤立化し仕事を辞めた。Aさんは「反対の立場だったら私も隠した」と。Bさんは、淡々と苦しみを語り、中学生も先生も共感!感じてもらえた授業。

4.最近の子どもたちの感想文

・白杖を持ちたくない気持ちが、すごーくわかりました。・目の不自由な人は、かわいそうではありません。普通の人と同じことができて凄い。・「目のリハビリ」があることにびっくりした。(多くの子どもたちからも)・調理したり、パソコン、アイパッド、携帯電話が使える。拡大読書器もすごいです。・目が不自由でも、楽しいことがあるということ。仲間が増え、パソコンができること。・ぼくは、差別しないと決めました。なんでもない人でも困っていたら、「どうしましたか?」って聞いて助けてあげます。・仕事のこと、いやな思い、見えなくなった時のショックなど、悲しい気持ちで聞きました。・話したくないことを話してくれた。感謝しています。強い人でした。・目の不自由な人が次の人に教えてあげる。気持の分かる人が教えるのはいいことです。

5・まとめ

 最後に、見えない人のハーモニカで力強く歌い、「ありがとう」と握手する子どもたち。まっすぐな心で感じ、聴いてくれた子どもたちが教えてくれました。
 「仕方ないじゃない・・生きていかなければだめだから」「僕は白杖も盲導犬も持つ」「私はデイズニーランドのキャスターになりたい。もし働くことになったら、不自由な人のために、いっぱいアイディアをだしたい」(4年女子)
 「出前授業45×2」は、私たちに「生きる勇気」を、未来に「希望」を感じさせる時間でした。

メンバー紹介

小島紀代子(事務局・相談員・視覚障害リハビリテーション外来)
小菅茂  (福祉機器普及員・テープ起こしワーク員)
入山豊次 (福祉機器普及員・グループセラピー・テープ起こしワーク員)
吉井美恵子(パソコン指導員・同行援護養成講座指導員・盲ろう者通訳介助員)
三留五百枝(フットケア&健康相談員・テープ起こしワーク員・看護師)

NPO法人障害者自立支援センターオアシスの紹介

1.「視覚障害リハビリ外来」1994年開設(月2回)
中央から視覚リハ専門の先生お2人と眼科医・内科医による、「就労・進学などの悩み相談」「移動・歩行のリハビリテーション」「拡大鏡・遮光眼鏡の選択、指導」「パソコン・iPad・拡大読書器」「日常生活用具」「福祉制度」の紹介と使い方指導等。
2.「日常生活訓練指導」~リハビリ外来と連携~(週4回)
「パソコン・機器の使い方指導」「調理・化粧教室」「転倒予防運動」等。
3.「こころのケア」
外来の先生方によるカウンセリング、「グループセラピー」「昼食会・カフェ」ほか。お茶やお話を楽しむ方、いろんな方たちとの交流の場を提供。
4.「地域社会貢献~地域の人と共に~」
「白杖・誘導歩行・転倒予防講習会」「サマースクール」「看護学生実習施設」「同行援護従業者養成講座」「出前授業」等。スタッフは眼科医・内科医、日常生活訓練士、元盲学校の先生、栄養士、看護師、保健師、MSW、機能訓練士他さまざまな職種の方、視覚障害者、その家族、ボランティア。

*「獲った魚を与えるよりも、魚の獲り方を教えよ」の精神で自立支援を行い23年。就労者の増加、「今」を受け止め明るく暮らす方たちが「希望」です。
http://userweb.www.fsinet.or.jp/aisuisin/

追記

オアシスグループの見事なステージでした。小菅さんを中心に練りに練ったスタイルで、小島さんのナレーション、入山さんの語り、吉井さんと三留さんのプレゼンと時間いっぱいに使ったショー形式の講演でした。
子どもたちに目の不自由な人の生活を教えるだけでなく、感じてもらう、考えてもらう工夫が溢れていました。私たちは時々参加しながら、なるほどなるほど、ほーそうだったのか、と感心しながら拝見していました。まさに「子供は未来」と感じました。そして子供と接することで、関わった大人達も生き生きしてくることが良く判りました。
オアシスの皆さん、ありがとうございました。

地域包括ケアシステムってなに?

ご案内 第255回(17-05)済生会新潟第二病院眼科勉強会 斎川克之

日時:平成29年05月10日(水)16:30 ~ 18:00
会場:済生会新潟第二病院 眼科外来
演題:地域包括ケアシステムってなに?−新潟市における医療と介護の連携から−
講師:斎川 克之(済生会新潟第二病院 地域連携福祉センター副センター長 新潟市医師会在宅医療推進室室長)
http://andonoburo.net/on/5791

 済生会新潟第二病院眼科で、1996年(平成8年)6月から毎月行なっている勉強会。どなたでも大歓迎です(参加無料、事前登録なし、保険証不要)。ただし、お茶等のサービスもありません。悪しからず。

抄録

 住み慣れた地域でどのような状況になっても安心して暮らすことのできる社会の実現が地域包括ケアシステムの考え方です。現在、全国の各市町村で、この地域包括ケアシステムの構築を進めています。ところで、「地域包括ケアシステム」って何?自分の住んでいる地域ではこれからどんな施策をしようと思ってるの?などなど。自分の生活とどうかかわってくるのか疑問に思う場面が多くあると思います。

 地域包括ケアシステム構築の取り組みにおいても、とりわけ近年、医療福祉分野で、目まぐるしく制度の変革が行われてきました。その中で病院や診療所などの医療機関と介護・福祉の事業所などとの協力体制はどうなっているのでしょうか。今地域では、「医療と介護・福祉の協力体制を今まで以上に強化していこう」といった動きが活発化しています。新潟市は全国でも先駆的に取り組んでまいりました。これまでの経緯と、そしてこれからについて、お話しさせていただきます。

 当日は、参加される皆さんとたくさん意見交換できれば幸いです。

略歴

斎川 克之(さいかわ かつゆき)
・社会福祉法人恩賜財団済生会 済生会新潟第二病院 地域連携福祉センター 副センター長
・一般社団法人 新潟市医師会 在宅医療推進室 室長
 職種:社会福祉士、医療ソーシャルワーカー、医療福祉連携士
 平成 7年/新潟県厚生連・在宅介護支援センター栃尾郷病院SWとして就職
 平成 9年/済生会新潟第二病院に医療社会事業課MSWとして就職
 平成22年/地域医療連携室 室長
 平成27年/地域連携福祉センター 副センター長
 平成27年/新潟市医師会在宅医療推進室長 併任

物語としての病い

報告:第252回(17‐02月)済生会新潟第二病院眼科勉強会 宮坂道夫

演題:「物語としての病い」
講師:宮坂道夫(新潟大学医学部教授)
日時:平成29年02月08日(水)16:30 ~ 18:00
場所:済生会新潟第二病院 眼科外来
http://andonoburo.net/on/5679

講演要約

 21世紀の医療には、あまり目立ちはしないが「物語論」という静かな潮流がずっと流れ続けている。日本語の「物語」は、英語のstoryやnarrativeに対応している。このうちnarrativeという英語が、最近の医療ではカタカナでそのまま使われることが増えている。物語論の考え方を応用した様々な実践がなされていて、これを一括りにして「ナラティヴ・アプローチ」とか「ナラティヴ実践」と呼んでいる。

 ナラティヴ・アプローチにはきわめて多様なものが含まれるが、「物語への向き合い方」という視点で捉えれば、3つの系統に分類できる。まず、医療者が患者という「他者」の経験を、当人の文脈のなかで理解しようとする実践群がある(これを仮に「現象学的実践」と呼んでおく)。
 1990年代末に、「エビデンス・ベイスト・メディスン evidence-based medicine」(文献的根拠に照らして最善の治療法を選択しようという考え方)の行き過ぎを憂慮した医師たちが提唱したのが「ナラティヴ・ベイスト・メディスンnarrative-based medicine」であったが、そこには、「医療者は専門性の枠組みの中で病気を捉えるが、病気を抱えているのは患者であり、その経験は医療者にとって容易に理解できるものではない」という問題意識があり、治療方針の選択については「疾患が患者にもたらす影響は、その当人の人生史や価値観によって左右されるのだから、医療者は文献上のデータではなく、個々の患者の人生の文脈において最善と評価できる治療・ケアを選択すべきだ」という発想の転換があった。

 第2の系統は、「物語」をケアとして用いる実践群である(仮に「ケア的実践」と呼んでおく)。
 これは、1970年代に心理療法の中から誕生したナラティヴ・セラピーと呼ばれる一群の実践に端を発している。そこでは、患者の「自己物語」と「認知・経験」とが矛盾することで心理的問題が生じると見なされ、治療者が患者に「自己物語の書き換え」を促すことが、ケアの目標となる。ナラティヴ・セラピーは、気分障害、発達障害、トラウマ、アディクション、摂食障害、DV等々の多岐にわたる「心の病」を抱える人たちのためのものであるが、そこに散りばめられていた斬新なアイデアは、もっと広い範囲の対象に適用できるのではないかという期待を強く抱かせた。
 講演では、食事を取ったことを忘れてしまった認知症患者への声かけを考えた。認知症患者の脳は、認知機能は低下するが情動機能は維持されているとされる。そのため、食事をしたことを思い出させようとするあまり、相手の自尊感情を損なうようなコミュニケーションは望ましくない。「食事を取らなければいけない」という患者の「自己物語」を他人が無理に変更させることで、患者の脳では「否定された」という情動が働いてしまう。むしろ、「わかりました。ご飯の準備をしておきますね」等と、自尊感情に配慮した声かけをすることで、「認知・経験」との矛盾を拡大させずに、「食事を取らなければいけない」という気持ちがやわらぐのを待つ方がよい。

 第3の系統が、筆者が専門的に取り組んできた、医療倫理の方法論としてのナラティヴ実践である。そこでは「倫理的問題は当事者の物語の不調和で生じる」と見なして、「対立し合う物語の調停」を試みる(仮に「調停的実践」と呼んでおく)。
 講演では、意識回復が望めない脳梗塞患者に胃瘻を造設するか否かが問題になった事例を考えた。妻は「本人は延命治療をしないでほしいと言っていた」と反対し、息子は「このまま死なせるのは忍びない。打てる手があるならお願いしたい」と実施を求めた。ここにあるのは、患者との関わりや、歩んできた道のりの違いに根ざす「思い」のズレであり、このズレを「妻の物語と息子の物語の不調和」と捉えることで、それを解消するためにどんな対話をこの2人としていけばよいのかを考える道が開けてくる。例えば、妻は患者の気持ちを代弁しているように思えるが、自分自身の気持ちはどうなのかを聞いてみてはどうだろうか。息子が抱いている父親への思いには大いに共感できるが、胃瘻の効果を医学的に考えてみると、この状態の患者に「胃瘻を作らない」ことが、必ずしも「何も手を打たないこと」とは言えないように思えることを伝えてみてはどうか。

 以上が講演の概略であるが、これらが眼科領域にどのように適用できるのかは、これまでほとんど考えたことがなかった。特に、ナラティヴ実践の中には視覚的なもの(紙芝居や絵本を作ったり、写真やビデオを用いたりする実践など)もあるが、これらはそのままでは適用することができない。しかし、講演後に視覚障害を持つ方から出された感想や意見をうかがうと、彼らが私の話を細部に至るまで丁寧に聞いてくれており、しかも自分の経験に照らして様々な発想を展開していることに驚かされた。視覚障害者にとっての「物語」の豊かさを感じたとともに、彼らとともに様々なナラティヴ・アプローチを試みることも、眼科の医療にとって意味があることのように思えた。

略歴

1965年長野県松本市生まれ。
早稲田大学教育学部理学科生物学専修卒業、大阪大学大学院医学研究科修士課程修了、東京大学大学院医学系研究科博士課程単位取得、博士(医学、東大)。専門は医療倫理、ナラティヴ・アプローチ(医療における物語論)など。
2011年より新潟大学医学部保健学科教授。
著書に『医療倫理学の方法 - 原則, 手順, ナラティヴ』(医学書院)、『ハンセン病 重監房の記録』(集英社)、『専門家をめざす人のための緩和医療学』(共著、南江堂)、『ナラティヴ・アプローチ』(共著、勁草書房)など。
宮坂道夫研究室ホームページ
http://www.clg.niigata-u.ac.jp/~miyasaka/

後記

 宮坂道夫先生は、全国区で活躍している生命倫理の大家です。眼科領域でも臨床眼科学会で講演して頂いたり、「日本の眼科」に投稿して頂いています。
 今回のお話は、「病いの物語」という演題でお話して頂きました。EBM(evidence-based medicine,根拠に基づく医療)が大流行りの今日、NBM(Narrative Based Medicine)をテーマとしたお話です。
 私が理解した先生のお話は、、、物語(ナラティブ)に基づいた医療。物語とは何か?アリストテレス(BC384年 – 322年)によると、物語は「再現・シークエンス(展開)・登場人物・感情を揺さぶる」と集約できる。 NBMでは、傾聴・関係性・ケアが基本。一言でいうと、医師は医療の標準化を求めEBMに精を出す。一方、NBMは患者目線での個別化医療。以下の言葉が、印象に残りました。他者理解のNBMとケアの実践のNBM、「無知のアプローチ」、「スニーキー・プー」、問題の外在化、「人生紙芝居」
 今回も、色々な角度から物事の本質を見つめる宮坂先生の世界を知り、大変勉強になりました。
 宮坂先生の益々のご活躍を祈念致します。

平成30年度採用 看護職の病院見学会 申込み受付中

平成30年度採用 看護職の病院見学会を行います。

<第1回目>平成29年3月30日(木)13:00〜16:00 満員
<第2回目>平成29年4月22日(土)13:00〜16:00 受付中
<第3回目>平成29年5月21日(日)9:00〜12:00 受付中

応募方法等の詳細は、採用情報ページの「平成30年度 看護職」の募集要項をご覧ください。

ブラインドメイクは、世界へ

報告:第251回(17‐01月)済生会新潟第二病院眼科勉強会 大石華法

演題:「ブラインドメイクは、世界へ -視覚障害者である前に一人の女性として-」
講師:大石 華法(一般社団法人日本ケアメイク協会)
日時:平成29年01月11日(水)16:30 ~ 18:00
場所:済生会新潟第二病院 眼科外来
http://andonoburo.net/on/5511

講演要約

 視覚に障害がある女性を対象に、自分自身で鏡を使わずにフルメーキャップができる化粧技法「ブラインドメイク」を考案したことをきっかけとして、2010年10月10日よりケアメイク活動をスタートし、6年間の活動を経て、2016年12月5日に一般社団法人日本ケアメイク協会を発足しました。
 今、「ブラインドメイク」は、日本の視覚障害女性の笑顔支援に留まることなく、世界の視覚障害女性の笑顔支援につながっています。

1.視覚障害者に化粧は不要か?
 「視覚障害者に化粧のニーズがあるのか?」「化粧をしても目が見えないのに、化粧する意味があるのか?」「目が見えないのに、化粧をさせるとは無茶なことだ」「そもそも彼女たちに化粧の話をすることは(出来ないのに)失礼なことだ」など意見が飛び交うなか、視覚障害の女性は、視覚に障害があるけれども「女性」であることに晴眼者の女性たちと何ら変わりはない。女性は死んでも死化粧をする。そこまで化粧は女性にとって重要なものとして扱われている。化粧は女性の尊厳を支えるアイテムであると言っても過言ではないと考えました。そのため、視覚に障害があることで、本当に化粧を諦めてもいいのだろうか?しなくていいのだろうか?それが本当に彼女たちの望んでいることなのだろうか?いや、そんなはずはない。私と同じ「女性」なのだから。と自問自答を繰り返す日々が続いていました。

2.視覚障害者理解不足が「障害」に?!
 ある日、一人の視覚に障害のある女性が「私はいつか目が見える時がきたら、化粧をしたいの・・・」と言って、1本の口紅を鞄の中に入れて持ち続けている女性の姿を見て、視覚障害の女性は目に障害があっても「女性だ!」と強く認識しました。
 それからは、視覚障害の女性と出会っても、同じ「女性」のスタンスで接することで、「目が見えない人」ということが気にならなくなりました。それどころか、一緒に“女子トーク”を楽しみ、“視覚障害者のアルアル話”を彼女たちとするようにまでなりました。
 ここで分かったことは、視覚障害者は、確かに身体の目の部分に「障害」はあるけれども、晴眼者側に視覚障害者理解が足りておらず、その理解不足の部分が、各自の思い込みや先入観(私はこのことを晴眼者側の「障害」と呼んでいます)を作りだしているのではないかということでした.。

3.女性の「美しくなりたい」という気持ちに寄り添う
 ブラインドメイクを指導する化粧訓練士の研修生たちに「視覚障害者と同行している時に、目の前に階段とエレベーターとエスカレーターがあれば、援護者はどうしますか?」と質問します。そうすると、「エレベーター」「エスカレーター」と、身体に負担が少ない、あるいは、容易に行く方法を考えます。しかし、答えは「本人に尋ねる」がよいことを話します。そして、目の前に「階段」「エレベーター」「エスカレーター」があるという情報を提供することの大切さを教えています。この回答を述べると、皆が「そっか!」と認識します。つまり、どうするかは援護者側が勝手に良かれと思ったことを実行するのではなく、本人にまず情報提供をして、本人が決めるという自己決定を尊重することの意味を話します。
 そして、次の質問では「視覚障害の女性はお化粧するしないは誰が決めるのでしょうか?」それは「本人」が決めることで、周囲が勝手に視覚障害者は化粧を「する」「しない」「できる」「できない」を決めるのではないことの理解を深めていただいています。
 最後に、「よく『当事者の気持ちに寄り添うことが大切だ』と言われていますが、視覚障害の女性の気持ちに寄り添えることは何でしょう?」という部分に触れます。回答は、「視覚に障害がある前に、その人を一人の『女性』であるということ。女性であるならば『美しくなりたい』という気持ちがあることを、認識して理解すること」と述べています。これらの回答は、ブラインドメイクができるようになった視覚障害の女性たちが、ケアメイク女子会で述べていたことを参考にしました。

4.「ブラインドメイク」は世界へ
 「ブラインドメイクは我々医療では手の届かない患者さんを笑顔にする不思議な力を持っている」と安藤伸朗先生(済生会新潟第二病院)は、仰ってくださっています。ブランドメイクは、単に視覚障害者が鏡を見ないで、綺麗にフルメーキャップすることができる化粧技法のみではなく、“笑顔”につながっています。その笑顔は、見ている晴眼者の顔にも“笑顔”にする力があります。ブラインドメイクは「笑顔支援」だと言っていますが、その笑顔支援は今や国境を越えて世界へ広がっています。
 それはなぜでしょう?世界にいる視覚に障害のある女性たちも、障害がある前に、一人の「女性」だということです。

プロフィール

大石華法(おおいし かほう)
大阪府生まれ。日本福祉大学大学院福祉社会開発研究科社会福祉学専攻博士課程。高齢者・認知症患者・視覚障害者・精神障害者を対象とした、化粧の有用性に関する研究を行っている。
主な研究論文に「ロービジョン検査判断材料としてのブラインドメイクの検討」「Family Support for Self-realization of the Visually Impaired Woman with Hereditary Blindness in a “Blind Makeup Lesson Program”」など。
一般社団法人日本ケアメイク協会理事長。

日本ケアメイク協会:http://www.caremake.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/caremake
活動履歴 http://www.caremake.jp/?page_id=42

過去の勉強会

本勉強会で「ブラインドメイク」の講演は3年連続
2年前この勉強会で、大石華法さんにブラインドメイクの講演をして頂き、昨年は岩崎さん・若槻さんが講演。今回の大石さんの講演で3年連続になります。下記ご参照ください。

報告:第228回(15‐02月)済生会新潟第二病院 眼科勉強会
演題:「視覚障害者の化粧技法について~ブラインドメイク・プログラム~」
講師:大石華法(日本ケアメイク協会)
日時:平成27年02月4(水)16:30 ~ 18:00
場所:済生会新潟第二病院 眼科外来
http://andonoburo.net/on/3418

報告:第240回(16-02)済生会新潟第二病院眼科勉強会 若槻/岩崎
演題:「ブラインドメイク 実践と体験」
講師:岩崎 深雪(新潟市;盲導犬ユーザー)、若槻 裕子(新潟市:化粧訓練士)
日時:平成28年02月17日(水)16:30~18:00
場所:済生会新潟第二病院眼科外来
http://andonoburo.net/on/4538

後記

 新潟で行われた勉強会にもかかわらず、わざわざ大阪と神戸から2名の参加があり、地元新潟の化粧訓練士・訓練生・視覚障害者を加えた5名が会場前方で揃ってブラインドメイクの実演、まさに壮観でした。
 講演もパワフルで大石節全開でした。今回の講演で、ブラインドメイクのことを「たかがお化粧」などと言ってはならないことを再度確認できました。それまで家にこもりがちだった視覚障害の方が、お化粧することで生き生きとしてきて、本人が変わるだけでなく、家庭も地域も明るく変えるのです。また認知症の方へのメイクが効果あるというお話も新鮮でした。ケアメイクをするようになって娘さんと女子トークが出来るようになったというお話にも感動しました。これは実際にそういう方を見てみないと分からないのですが。私自身、新潟の視覚障害をお持ちの女性が、ブラインドメイクのお蔭で、どんどん見違えるように活発になっていくさまを目の当りにして、感動しました。
 まさに医療ではできない笑顔を取り戻すことを可能にする魔法だと思いました。大石さんの、一般社団法人日本ケアメイク協会のブラインドメイク、ますますの発展を応援したいと思います。

大石先生から下記伝言がありました。

「書籍出版のご支援をお願いします」
現在、ブラインドメイクをマスターした視覚障害の女性たち10名に「ブラインドメイク物語、それぞれの想い」を執筆してもらってます。
・「目が見えなくても化粧ができた!」彼女たちの想いを本にしたい!
(執筆:大石華法・「ブラインドメイク」体験者10名 136ページ予定
価格:3,240円(税込)判型:A5判 株式会社メディカ出版 fanfare企画)

300冊購入支援者がいれば、書籍になるそうです。
何冊でも結構ですので、ご支援お願い致します。
下記URLから支援登録が出来ます。
https://fanfare.medica.co.jp/book/projects/ohishi/

物語としての病い

案内:第252回(17‐02月)済生会新潟第二病院眼科勉強会 宮坂道夫

演題:「物語としての病い」
講師:宮坂道夫(新潟大学医学部教授)
日時:平成29年02月08日(水)16:30 ~ 18:00
場所:済生会新潟第二病院 眼科外来
http://andonoburo.net/on/5556

 済生会新潟第二病院眼科で、1996年(平成8年)6月から毎月行なっている勉強会。どなたでも大歓迎です(参加無料、事前登録なし、保険証不要)。ただし、お茶等のサービスもありません。悪しからず。

抄録

 21世紀の医療には、あまり目立ちはしないが「物語論」という静かな潮流がずっと流れ続けている。そこには多様な実践が含まれているが、中でも注目したいのが、「病いの物語」をケアに用いる実践である。これは、1970年代に心理療法の中から誕生したナラティヴ・セラピーと呼ばれる一群の実践に端を発している。

 そこでは、患者の「自己物語」と「認知・経験」とが矛盾することで心理的問題が生じると見なされ、治療者が患者に「自己物語の書き換え」を促すことが、ケアの目標となる。例えば、アルコール依存症の集団療法では、「自らを律して生きてきた」という自己物語を抱く患者に対して、「飲酒習慣を変えられず、自己破壊的な行動をとっている」という認知を促し、「自らを律せられない無力な自分が、他者の力を借りて困難を乗り越えようとしている」という新しい自己物語に書き換えさせることが目標とされる。

 さらに近年では、「自己物語の書き換え」を目的とせず、治療者が患者の「自己物語の承認」を促すだけにとどめる実践例も多数報告されており、それらがケア的実践として成りたっていること自体が興味深い。

 筆者が高齢者やハンセン病回復者に実践しているのは、「人生紙芝居」であるが、これは視覚的な手法なので、眼科領域ではそのままでは使えないかもしれない。たとえば聴覚や触覚、味覚や臭覚に働きかける方法が考案できないものか、参加者と一緒に考えてみたい。

略歴

 1965年長野県松本市生まれ。
 早稲田大学教育学部理学科生物学専修卒業、大阪大学大学院医学研究科修士課程修了、東京大学大学院医学系研究科博士課程単位取得、博士(医学、東大)。専門は医療倫理、ナラティヴ・アプローチ(医療における物語論)など。
 2011年より新潟大学医学部保健学科教授。
 著書に『医療倫理学の方法 - 原則, 手順, ナラティヴ』,(医学書院)、『ハンセン病 重監房の記録』(集英社)、『専門家をめざす人のための緩和医療学』(共著、南江堂)、『ナラティヴ・アプローチ』(共著、勁草書房)など。
宮坂道夫研究室ホームページ
http://www.clg.niigata-u.ac.jp/~miyasaka/

宮坂道夫先生の本勉強会での講演歴(過去5回)

報告:第158回(2009‐04月)済生会新潟第二病院 眼科勉強会 宮坂道夫
演題:「医療紛争のソフトな解決について」
講師:宮坂 道夫(新潟大学医学部准教授)
日時:平成21年4月8日(水) 17:00~18:30
場所:済生会新潟第二病院 眼科外来
http://andonoburo.net/on/5496

報告:第139回(2007‐09月) 済生会新潟第二病院 眼科勉強会 宮坂道夫
演題:『かつてハンセン病患者であった人たちとともに』
講師:宮坂道夫(新潟大学医学部准教授)
日時:平成19年9月12日(水) 16:30 ~ 18:00
場所:済生会新潟第二病院 眼科外来
http://andonoburo.net/on/5492

報告:第80回(2003-01)済生会新潟第二病院眼科勉強会 宮坂道夫
演題:『ファミリーハウス』
講師:宮坂道夫(新潟大学医学部准教授)
日時:平成15年01月08日(水) 16:30 ~ 18:00
場所:済生会新潟第二病院 眼科外来
http://andonoburo.net/on/5486

報告:第70回(2002年3月) 済生会新潟第二病院 眼科勉強会 宮坂道夫
演題:NBM(narrative based medicine)-物語論の観点から医療をとらえなおす-
講師:宮坂道夫(新潟大学医学部保健学科講師)
日時: 平成14年3月13日(水)16:00~17:30
場所: 済生会新潟第二病院 眼科外来
http://andonoburo.net/on/5500

案内:第55回 (2000年12月) 済生会新潟第二病院 眼科勉強会 宮坂道夫
演題:「生命倫理って何だろう?」
講師:宮坂道夫 (新潟大学医学部保健学科)
日時:平成12年12月13日16:00~17:30
場所: 済生会新潟第二病院 眼科外来
http://andonoburo.net/on/5533

Web配信について

「新潟大学工学部渡辺研究室」と「新潟市障がい者ITサポートセンター」のご協力により実況ネット配信致します。以下のURLにアクセスして下さい。
http://www.ustream.tv/channel/niigata-saiseikai
当日の視聴のみ可能です。当方では録画はしておりません。録画することは禁じておりませんが、個人的な使用のみにお願いします。

済生会新潟第二病院 眼科勉強会

 1996年(平成8年)6月から、毎月欠かさずに続けています。誰でも参加出来ます。話題は眼科のことに限らず、何でもありです。参加者は毎回約20から30名くらいです。患者さん、市民の方、医者、看護師、病院スタッフ、学生、その他興味のある方が参加しています。眼科の外来で行いますから、せいぜい5m四方の狭い部屋で、寺子屋的な雰囲気を持った勉強会です。ゲストの方に約一時間お話して頂き、その後30分の意見交換があります。
日時:毎月第2水曜日16:30~18:00(原則)
場所:済生会新潟第二病院眼科外来

*勉強会のこれまでの報告は、下記でご覧頂けます。
1)ホームページ「すずらん」
新潟市西蒲区の視覚に障がいのある人とボランティアで構成している音声パソコン教室ホームページ
http://occhie3.sakura.ne.jp/suzuran/
2)済生会新潟第二病院 ホームページ
http://www.ngt.saiseikai.or.jp/section/ophthalmology/study.html
3)安藤 伸朗 ホームページ
http://andonoburo.net/

第17回 肝臓病教室開催報告

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平成28年3月26日(土)に「第17回 肝臓病教室」を当院で開催しました。「肝臓がんにならないために 〜今、知ってほしい最新の肝臓治療〜 」をテーマに、医師・薬剤師・栄養士・看護師の講義を行いました。当日は、寒気が戻り寒い中176名の方々に参加して頂きました。医師の講義では、肝臓癌になりやすい4つのチェック項目ということで①C型肝炎ウイルスに感染している②B型肝炎ウイルスに感染している③お酒をたくさん飲む④脂肪肝あるいは糖尿病、あるいは肥満があるという項目が挙げられました。1つでも当てはまった方は、肝臓癌になる可能性がありますが、C型肝炎は治療が進歩しほとんどの方が治る病気になり、また、B型肝炎も治療で進行を止めることが可能です。ウイルス肝炎の検査を受けていない方は、無料肝炎検診の制度もあるので一度は受けましょう。そして、講義後は懇談会が行われました。参加者同士でお話しして頂き、治療をするか迷っている方が治療している方の話を聞き、治療を前向きに考えられるようになりました。
次回は、肝癌をテーマに肝臓病教室が行われる予定です。どなたでも参加できますので、興味のある方の参加お待ちしています。

(肝臓病教室運営メンバー一同)

第16回 肝臓病教室開催報告

school16-01

2015年9月12日(土)当院10階会議室で「肝臓がん」をテーマとした第16回肝臓病教室を開催しました。今回も147名と多くの方に参加して頂きました。過去に参加された方も新しい参加者も肝臓癌の治療の進歩や方法、新薬の話から食生活や日常生活での注意点など、メモを取りながら熱心に耳を傾けていました。
肝臓病教室終了後の懇親会には15名が参加され、患者同士の交流やスタッフへの質問など、日常生活で困っていることや、工夫していること、自身の治療の経緯などについて会話していました。これから治療を受ける予定の方にとって、治療中の辛さや治療後の生活の変化などは、とても貴重な経験談になっていたようです。
肝臓は沈黙の臓器です。肝臓がんになっていても無症状で気付かれないこともありますので、早期に発見し早期に治療することが重要と言えます。そのためにも、「まずは検診を受けていただくこと」を目標に今後も肝臓病教室スタッフ一同で啓発活動に取り組んで行く予定です。
次回は11月7日(土)に第5回肝臓病セミナーを新潟市ユニゾンプラザで開催する予定です。多くの皆様の参加をお待ちしています。

(肝臓病教室運営メンバー一同)

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