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案内:ロービジョンケアを始めて分かったこと

案内:第263回(18-01)済生会新潟第二病院眼科勉強会 加藤 聡

演題:ロービジョンケアを始めて分かったこと
講師:加藤 聡(東京大学眼科)
日時:平成30年01月10日(水)16:30 ~ 18:00
会場:済生会新潟第二病院眼科外来
http://andonoburo.net/on/6237

抄録

 私は東大病院眼科外来でロービジョン外来を立ち上げて16年、日本ロービジョン学会の評議員になって8年、同じく理事長になって5年が経ち、眼科医として思ってもみなかったことのいくつかに遭遇しました。それらを思いつくままに皆さんに知っていただきたいと思っています。
 私は眼科医として毎日、たくさんの患者さんを診ています。その一方、ロービジョンケアを始めて福祉の方々とも知り合う機会や、その方面の勉強も行うことも増えてきました。しかし、多くの眼科医を含めた医療関係者は福祉については不勉強です。その理由の一つに医師、看護師、視能訓練士も含めての医学教育の場では、福祉について学習する機会が非常に少ないことが挙げられます。医療と福祉は本来は継続すべきものなのですが、様々な点で差異が生じています。例えば、医療では患者は病院に自由アクセスできるのに対し、福祉では行政上の垣根を超えることができないなどです。
 日本でも、ロービジョンケアがずいぶん行われるようになってきたと思っています。しかしその一方、2017年のオランダで行われた国際ロービジョン学会で日本人のロービジョンケアに携わっている人を一番驚かせたことは、世界中195か国中178か国(91%)でロービジョンケアに対するデータがあるのに対し、日本ではロービジョンケアのデータがとられていない数少ない国に分類されていたことだと思います。ロービジョンケアに対するデータというのは医療分野がとるべきものなのか、福祉分野でとるべきものか、日本ではその方向性もはっきり見えできていません。
 我々眼科医はロービジョンケアの臨床論文を書くときにその対象として、patients with low visionとしますが、福祉や教育の方々の論文ではpeople with low vision またはchildren with low visionとの記載を散見します。私たち、医療関係者はロービジョンの人を患者として見ていることは必ずしも良いことだとは限らないようにも思っています。
 以上のように医療と福祉の狭間に苛まれながら、医療側からのアプローチの限界と戦っている私の話をしたいと思っています。

略歴

加藤 聡(カトウ サトシ)
1987年 新潟大学医学部医学科卒業
     東京大学医学部附属病院眼科入局
1996年 東京女子医科大学糖尿病センター眼科講師
1999年 東京大学医学部附属病院分院眼科講師
2000年 King’s College London, St. Thomas’ Hospital研究員
2001年 東京大学医学部眼科講師
2007年 東京大学医学部眼科准教授
2013年 日本ロービジョン学会理事長
  現在に至る

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