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視力を失ってから「嬉しかったこと、役立ったこと」

報告:第243回(16-05)済生会新潟第二病院眼科勉強会 大島光芳

済生会新潟第二病院眼科勉強会の報告です。参加できない方も、近況報告の代わりに読んで頂けましたら幸いです。

報告:第243回(16-05)済生会新潟第二病院眼科勉強会 大島光芳
演題:視力を失ってから「嬉しかったこと、役立ったこと」
講師:大島光芳(上越市)
日時:平成28年05月11日(水)16:30~18:00
場所:済生会新潟第二病院眼科外来
http://andonoburo.net/on/4704

講演要約

1.はじめに
 2009年、59歳の時に職場の時計が見えず、移動にも支障をきたしていました。しかし定年退職までまだ1年あり、どうしていいかが分かりませんでした。このとき偶然に大学病院の廊下で、ロービジョン外来の文字を見つけてもらいました。受診したら、少し見通しが立つようになり、これを機会に、病気を理由として休職を決めました。このロービジョン外来を見つけたことが全ての始まりでした。
 現在の目の状態は全盲、明るさも暗さも感じません。見えないと目からの情報がないので映像の記憶ができません。記憶が極端に苦手になりました。今日は「音声ペン(タッチメモ)」を利用しながら話します。

2.私の日常
 全く見えませんが、家族の配慮があれば日常生活はできます。
 道具で最初に使いだしたのは携帯電話でした。携帯電話を音声ガイドがでるように設定してもらい、電話ができるようになると、社会との繋がりが保てました。その後も出会う人毎に番号と名前を登録し、私の脳の外部メモリーとしています。
 現在は音声訳された本をCDで聞く時間が一番長いです。聞くには音声再生装置(プレクストーク)を使います。本の選択は主に東京と新潟の点字図書館が紹介してくれた中から選んでいます。去年は 150冊を読みました。
 寝る前には「光メロディセンサー」で消灯を確認します。
 本を読みだしたのは2011年7月に「防災避難マニュアル」を読んで歩行補助具のパームソナーなどを知ったのがキッカケでした。この歩行補助具も愛用しています。

3.復活を目指して取り組んだパソコン
 2010年1月、パソコンのソフトを買いました。
 2月、パソコンでNHKラジオ第2放送「聞いて聞かせて ブラインド・ロービジョン・ネット」が遡って聞けるようになり、貪って聞きました。この年は就労支援の工藤正一さんによる「完全マニュアル中途視覚障害からの再出発」と長野県の広沢里枝子さんによる「ピアカウンセリング」と私と同じ年齢の岩井和彦さんによる「15歳の弁論」に励まされました。
 遡って聞いた2008年の放送に「検証ガイドヘルプ事業」があり、この放送をICレコーダに収録しパソコンで文章にすることによって、タッチタイピングもできる様になりました。文字入力の習得が先ではなく、楽しみを生み出すために操作を憶えるのが先。入力技術は後からついてきました。
 一生懸命にやることができると寂しさが一機に吹っ飛びました。入力ができたらメールも可能になり、市政モニターになりました。町内や市内外のまちづくり活動に居場所もできました。

4.ガイドヘルパーさんに導かれて
 私より辛い人の話をして、励ましてくれるヘルパーさんがいました。パソコンに取り組むのを誘発してくれたのもヘルパーさんでした。そして誘導歩行を始めて1年後の2010年9月、ヘルパーさんが、新潟市でのガイドヘルパー養成講座の先生が素晴らしかったと伝えてくれました。
 私は10月から1人で列車に乗り、駅員の誘導を利用して新潟へ行くことを始めました。新潟駅に到着すると、新潟の事業所からその先生がガイドにきてくれました。このときに疑問に思っていた誘導歩行のされ方を学び直しました。階段を上る姿勢を教えて頂きながら、生きる姿勢も蘇ったように思います。 
 翌月にパソコンをきちんと習いたいというと12月に亀田ふれあいプラザで学ぶ機会をセットしてくれました。これが県視障協や点字図書館を頻繁に利用するキッカケになりました。

5.ピアカウンセリングにおける感情の解放
 2011年9月に広沢里江子さんに会いたくて長野県上田市でのピアカウンセリング集中講座に参加しました。障害者自身がカウンセラーとなって、障害者に対して行うものをピア・カウンセリングと言います。ピア・カウンセリングでは、時間を対等に分けて、互いに役割を交換しながら聞きあい、相手に心を寄せて傾聴します。
 内容は精神的相談から自立生活のための学びまで深いそうですが、大切な目的に自己信頼の回復があり、そのために支えあいながら積極的に感情を解放します。これは抑圧してきた感情を解き放つことで、過去に受けた傷を癒し、回復する事により、より合理的な思考を取り戻すのに役立つとの位置づけでなされます。抑圧は例えば「世話になっているのだから」「障害者なのに我儘だ」と自分を押しこんでしまうことです。私も無意識に鎧をまとっていました。感情の解放は障害者だけで行うからこそ、ここなら話せる、ここなら安全だとの気持ちがありました。加えて私はメンバーにも恵まれたと感じています。弱い立場の初心者を受け止める気持ちを全員から感じました。だからできたのだと思います。感謝しています。

(追記:話したことのある受診時の言葉、福祉関係者の話、近所の人たち、NPO法人オアシスなどは省略しました。)

略歴

1950年 現在の居住地で生まれ、育ち、生活。原因不明の視神経萎縮。
2006年 運転断念、07年通院同伴、08年送迎通勤、09年6月ロービジョン外来受診。
    7月に休職、8月に視覚障害者2級、翌年5月1級、7月に定年退職。
2009年 点字図書館登録、NPO法人障害者自立支援センターオアシス会員。
2010年 任意団体上越市視覚障害者福祉協会会員。2011年に社会福祉法人新潟県視覚障害者福祉協会会員、同年に任意団体新潟県中途視覚障害者連絡会会員。
2012年 NPO法人まちづくり学校会員。2013年に任意団体リハ協会会員。
2014年 町内会法人化検討委員。2015年に新潟県中途視覚障害者連絡会 副会長。

過去の講演

過去、大島さんにお話して頂いた講演を記しました。
andonoburo.netに登録しています。参考まで

第201回(12‐11月) 済生会新潟第二病院 眼科勉強会  大島光芳
演題:「活力~どうやって生み出すかを考えてみませんか~」 
講師:大島光芳 (上越市)
日時:2012年11月14日(水)16:30~18:00
http://andonoburo.net/on/4578

後記

講演中の大島さんの静かで落ち着いた口調に、凄みを感じました。
本当に見えなくなって6年生と名乗って講演が始まりました。その後は、携帯電話、音声再生装置(プレクストーク)、DAISY図書、点字図書館、「光メロディセンサー」、パームソナーなどについて、実際のグッズなどを参加者に回覧しながら講演が続きました。
その後、パソコン・ガイドヘルパー・ピアカウンセリングについて詳細に紹介がありました。特にピアカウンセリングにおいて、抑圧してきた感情を解き放つ、自己信頼の回復等々、とても意義深い話をお聞きすることが出来ました。感動しました。
大島さんの、益々の活躍を祈念致します。

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