シンポジスト〜川瀬 和秀 (岐阜大学;眼科医) 【コメント】 「明日の眼科を考える−医師の立場から−」  演者は眼科医となり20年が経過した。この20年間で白内障の手術の進歩は目覚ましいものがある。角膜 移植や硝子体手術の進歩も素晴らしい。角膜のパーツ移植は術後の視力1.0も期待でき、術後感染症や拒 絶反応も激減している。糖尿病網膜症から始まった硝子体手術は、禁断の領域であった黄斑部の増殖膜を 剥がすことが可能となった。緑内障手術はMMC(抗癌剤)の使用により、術後眼圧下降効果の持続が格段 に進歩した。  技術的な進歩により生活可能な視機能維持や視機能の獲得が可能となる治療が増えたことは嬉しい限り である。しかし、これらの技術をもってしても生活に不自由を感じている患者の数はむしろ増えているの ではないだろうか?最近のロービジョンケアのシンポジウムやセミナーの開催は、眼科医が、視機能障害 の進行が止まった医学的な治癒だけで治療が終わらないことの大切さにやっと気付き始めた証拠である。 この件に関して、今後のロービジョンケア教育やロービジョン学会の在り方が問われているのは確かであ る。  さらに次の20年で、眼科医療はどのように進歩するのか?人工眼の開発も進められているが、実際には もう少し身近な治療や診断法の進歩が必要となる。講演では、私の専門の緑内障における、将来的に導入 が期待される診断や治療、光学的な技術を使用したサポートシステムの開発を紹介し、今後の眼科医療の 進む方向性を検討したい。 【略歴】  1988年 順天堂大学医学部卒業  1988年 岐阜大学医学部眼科学入局  1993年 ミシガン大学研究員  1997年 文部省内地研究員(山口大学眼科)  1999年 アイオワ大学眼科研究員  2001年 岐阜大学医学部眼科講師  2002年 岐阜大学医学部眼科助教授  2005年 大垣市民病院眼科医長  2007年 岐阜大学医学部眼科准教授 現在に至る