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股関節よもやま話 【第二話】

整形外科

股関節よもやま話 【第二話】~よくわからない!?股関節痛~

整形外科 伊藤 知之

今回は股関節痛の中でも比較的原因が見つけにくい・専門医でないとわからない病態についてお話したいと思います。さて、みなさんは自分の関節がどれくらい滑々しているかご存知ですか?その指標として摩擦係数というものがあり小さければ小さい程滑々しているのですが、一説によると人間の関節軟骨は0.005であると言われています。ちなみにアイススケートで0.03、人工関節では0.1というように、人間の関節軟骨は驚異的な滑々さを示し、現代の科学では再現できないほど高精度にできているのです。股関節はそれに加え片足で立つと体重の3倍かかる人体最大の荷重関節であり、かつ厚い筋肉などの軟部組織の奥底にあるため、ちょっとした変化が増幅され股関節痛を引き起こす原因になるのかもしれません。しかし、その変化がちょっとしたものであるため、なかなか通常の検査ではわかりにくく病期が進行しないと激痛にならないという特徴もあります。そのため、耳が痛いのですが医師によってはしょうがないの一言で片づけられがちなことがあります。実際、初期の場合は痛みどめ(消炎鎮痛剤)の内服や物理療法などの対症療法で経過をみるのですが3か月やってみて変わらないようならば紹介受診をお勧めします。よく聞く症状としては車の乗り降りで痛い・痛みどめを飲んでいると我慢できるがやめると生活に支障をきたすなどの症状です。

それでは、良くわからない股関節痛の具体的な例をいくつかお示しします。「臼蓋形成不全」は整形外科医であれば誰でも診断可能な病態ですが、その中に程度が軽いために診断が困難なものが混じっています。当院では3次元的評価にてはじめてわかるものや特殊な取り方で撮影されたレントゲンでようやく診断可能な方もよく紹介されてきます。通常は対症療法と定期経過観察で大きな問題は起こりませんが、時々症状が治まらない場合があり、そのような方は手術的治療を検討しなければなりません。その方法として骨切術や股関節鏡等の関節温存術から余儀なく人工関節を選択する場合等、その患者さん一人一人の病態・生活環境に応じて治療法を選択します。

次に「股関節唇損傷/femoroacetabular impingement (FAI)」という病態です。これはダウンタウンの松本人志さんが治療を受けたおかげで、最近になりようやく市民権を得られはじめるようになりました。簡単に言うと、もともと股関節を痛めやすい形をしている方が発症するものと思って頂いて構いません。臼蓋形成不全もその一つと言えば一つなのですが、臼蓋のつくりが浅い場合は直感的にX線でもみつけやすいため以前から病態解明が進み市民権を得ていました。FAIは特殊なX線サインを見落とさないことや、さらにいくつか追加検査を行って初めて確定診断に至ることなどから、未だに確定診断に至らないことが多い病態です。FAIは、正常な骨が日々の生活で毎回ぶつかるために骨のでっぱりができ、それによって股関節唇という臼蓋の縁にあたる防波堤を損傷し痛みを出しているものです。しかしここでいくつか疑問がでてきます。X線でサインがある人が全員本当に痛くなるのか?損傷した部位だけを直しても根本が直っていないためすぐに再発するのでは?現在もけんけんがくがくと学会レベルで討議されていますが、残念ながら他の股関節疾患の歴史が示す通り、真実はまだまだ先にならないとわからない段階であると言わざるをえません。ただ現在言えることは、このような病態があり股関節痛の一つとなっていること、その痛みを軽減するためには侵襲の少ない股関節鏡という手術で治療が可能であることだと思います。詳細は当院ホームページに記載されているためそちらを御参照下さい。
お近くの整形外科で3か月以上対症療法を行っても改善しない股関節痛があるときは、どうぞ一度当院に紹介してもらって下さい。

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