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股関節よもやま話【第一話】

整形外科

股関節よもやま話【第一話】~変形性股関節症の自然経過~

整形外科 伊藤 知之

今日は股関節で恐らく一番多い病名である<変形性股関節症>についてお話ししたいと思います。通常このお話をする場合は、手術をどうやる・こうやるやナビゲーションを使う・使わない等の話が多いと思いますがあえてそのような話はせず、~変形性股関節症の自然経過~について書きたいと思います。
変形性股関節症は病期の進行度により前期・初期・進行期・末期の四段階に分類されます。これは主に診察の際補助診断の一つとして行われるX線を基準にした分け方です。体重のかかる部分(荷重部)に骨硬化(繰り返すストレスで骨が固くなり白くうつること)・骨嚢胞(骨の中にすが空き空洞になったところ)・骨棘(関節自体が安定しようと不安定なところに過剰にできた骨)ができていないか、軟骨の厚さを意味する関節の隙間(関節裂隙)が少なくなっていないか、骨頭が外側にずれてきていないか(亜脱臼)など、様々なことをみながら病期を決めていきます。

通常は病期が進むに従い痛みが強くなることが多いのですが、あくまでX線は補助診断であります。X線は骨の変化をとらえることは得意ですが、それ以外のものは不得意であり、病期と症状が一致しないことも多々あります。残念ながら現代の医学では痛んだ軟骨が再生し正常な軟骨に戻ることはありません。変形性股関節症の原因が、体重を支えるところが狭く応力が集中し易い臼蓋形成不全ではなおさらです。

しかし、一方で人体の自然治癒力もあるため、長い年月をかけながら全く正常にはなりませんが代償機能が働くことで、できるだけ痛いと感じないように関節が変化していくことも事実です。先程X線のところでお話した骨棘などはその証拠であり、関節が安定化するように体が反応して変化しているため生じる反応なのです。またそのように関節が安定化すると股関節の骨リサイクル反応(骨代謝)がかわり、場合によっては骨硬化や関節裂隙の狭小化が改善することがあります。もちろん正常に戻るのではなく、偽の<軟骨もどき>が代わりをしてくれるのですが。

このような変化が数年単位でゆっくり行われ、しかも波を打ちながらよくなったり悪くなったりを繰り返していきます。そのため、とても痛い時期もあれば痛みが楽になることもままあり、加えて体重の変化や家庭・職場環境の変化等が加わり総合して症状が決まっていきます。ですので、まず良識のある医師であれば今の時期が一体患者さんにとってどの時期なのか?ということをある程度お付き合いをしながら見極める時間が必要になります。その大きな波がどちらを向いているのかを見極めてはじめて大きな治療方針を立てるようにしております。

私が専門を選ぶきっかけの一つに、<自然の営みに従い>という本との出会いがあげられます。これは第3代:新潟大学整形外科教授であった河野左宙先生が書いた本で、医療の基本理念として自然経過を尊重しながら治療方針を立てることを書いていました。近年、インターネットの普及やメディアでの名医100選など、グルメ番組とでも言わんばかりの情報操作が行われるようになり、新潟でも従来行われていなかった安易に人工関節を入れるだけの医療が行われるようになってきました。人工関節は最後の手段ですので安易な選択はせずに、まずは今の状態が自然経過のどのようなときなのか?現在何を一番問題にしているのかなどを信頼できる医師とよく相談した上で治療方針を決めることをお勧めします。

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