報告『新潟ロービジョン研究会2012』 (6;最終回)研究会の感想  『新潟ロービジョン研究会2012』      日時:2012年6月9日(土)      開場12時45分 研究会13時15分〜18時50分   会場:済生会新潟第二病院 10階会議室  http://www.ngt.saiseikai.or.jp/02/ganka/index5.html  下方『新潟ロービジョン研究会の過去の開催報告』2012年に「報告」が掲載 【研究会を主宰して】 安藤伸朗 (済生会新潟第二病院)  今年も充実した研究会を開催することが出来ました。今回で12回目になります。私 にとっては、慌ただしく過ぎ去った怒涛の1日でした。ああすれば良かった、この人 ともう少しお話ししたかった という悔いばかりが残っています。  当初よりこの研究会は、医師や医療関係者のみでなく、当事者・家族、そして多く のサポートする方々が一堂に会して討論することを信条にしてやって参りました。今 回も新潟県内外から120名(県内70、県外50;内訳〜医療関係者60名・研究・教育関 係者40名・当事者・家族20名)が参加しました。   その時に一番関心のあることをテーマに選びますが、今回は「視覚障害者へのITに よるサポート」「網膜変性治療の最前線」「病名告知」と3つテーマを選びました。 欲張ったために討論の時間が十分に取れなかったことが反省点です。  片道分の交通費で出演を承知して頂いた講師・座長・シンポジストの皆様に、改め て御礼申し上げます。 1)シンポジウム1『ITを利用したロービジョンケア』  ITを中心に、「作り手」「作り手とユーザーの架け橋」「ユーザー」がそれぞれに お話ししてくれました。スクリーンリーダーの開発に携わった渡辺先生の音声合成器 の開発、大きな驚きでした。実演は記憶に残りました。三宅先生は、「視力じゃない  記憶だ」「記憶 情報 想い」金言を取り混ぜた印象に残るプレゼンテーションで した。講演は、お父様の三宅養三先生よりも上手と思うのは私だけでないと思いま す。園さんの(失明に向かう自分をワクワクしていた)と言うコメント、毎回ですが 凄いなと思いました。作り手/架け橋はユーザーのニーズを如何に聞き出す(探り出 す)かがポイントだと感じました。またユーザーは如何に思いを作り手に伝えるかが 大事と思います。ただ、製品となると採算がとれるのかが企業側としては欠かせない 視点です。現在の現物支給の福祉行政そのものが問われなくてはなりません。 2)特別講演「網膜変性疾患の治療の展望」小沢洋子:慶応大学眼科  「神経は損傷を受けると再生しない」というCajal(1928)の呪縛から抜け出しつ つある現在の状況を教えてくださいました。本当は難しいお話を素人にも判りやすく 語って頂き流石でした。「遺伝子治療や薬物治療は、多施設での研究が必要。iPS細 胞の研究、薬の開発に適している。神経保護治療は、長期観察を要する、根気が必 要。拠り所が判っていることが後ろ盾となる、、、」成程と合点しながら拝聴しまし た。 3)基調講演「明日へつながる告知」小川弓子:小児科医・福岡市立肢体不自由児 施設あゆみ学園  「告知が新しいスタートになるように」、これですね!! 「患者の不満の一つ は、医療者の態度」〜反省もありますが、医者は打たれ強いことも必要かもしれませ ん。「告知した後のケアが大事、未受容の期間は長い、前向き・現実的対応を、家族 を支える、『はっきり、素直に、曖昧でなく』、説明は同情や気休めでなく、『あな たは、大切な一人の人、決して一人でない、どんな人生にも価値がある』、『生まれ てきて、おめでとう!!』」 〜 経験から発した言葉には、重みがありました。 4)シンポジウム2『網膜色素変性の病名告知』  考えさせられるポイント満載でした。親の受け止め方・家族への告知、ショックを 和らげる伝え方、マイナスのコメントがすごい生活制限に繋がってしまう、医師自身 が明るいイメージを持つ、告知のタイミングが重要、、、、。フロアーから、「告知 をするかどうかでなく、どのように伝えるかが大事ではないか」、「医療者側には、 遺伝カウンセリングの知識が必要」、「ピア・カウンセリングは効果あり」というコ メントを頂きました。三宅先生の個人的な体験も会場の心を揺さぶりました。多々反 省点はありますが、医師も患者もそして多くの市民の方が参加して、「網膜色素変性 の病名告知」を話し合うという眼科としては画期的なイベントだったと思います(癌 の告知ではこれまでもあったと思います)。フロアの人達の表情がとても真剣で誰一 人お客様になっている人がおらず熱い空気だったのが印象的でした。収穫の一つは、 患者さんや家族そして多くの市民の方々が、眼科医も告知をするときには、悩んでい るんだということを知ったことではないかと思います。医師も人の子です。告知する 医師へのケアも欠かすことのできないポイントであると感じました。  「参加者はお客さんではありません。後片付けを手伝ってください」と呼びかけた ところ、参加者の全員(講演者も)が会場整理を手伝って下さいました。これにも感 謝でした。本研究会が毎年継続できるのは、こうした参加者の熱意と心遣いであるこ とを改めて感じました。 【参加者からの感想】  到着順 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー (大学教員、新潟市)  『新潟ロービジョン研究会』はいつもながら、感銘を受けました。また、○○大学 の△△ゼミの学生にもいろいろと役割を振っていただき、より積極的な参加となりま した。内容も、最先端の知識や患者さんの声が聴けたこと、苦悩しながらも真剣に取 り組む眼科医の先生方の姿勢等、多くの学びを学生たちとともに得ることができまし た。感謝申し上げます。ありがとうございました。 (眼科医;大学勤務、東京)  この度は新潟ロービジョン研究会に参加させていただきありがとうございます。魅 力的な講師陣、熱いディスカッション、とても有意義でした。また、懇親会では美味 しい新潟の料理とお酒も楽しみました。 (研究所職員、兵庫県)  ためになる研究会と懇親会に参加させていただけて本当によかったです。参加する たび、毎回発見があり、勉強になり、そして、気持ちが前向きにアグレッシブになっ て帰ってくるような気がします。  「Q:誰のために? A:患者さんのため」を忘れず、みなさんの力を借りながら、 自分の進むべき道と患者さんの強さを信じて、これからもロービジョンケアに取り組 んでいきたいという思いを強くしました。 (機器展示業者)  当事者、行政、NPO(ボランティア)、医療、業者等の多分野に亘る関係者が一つ の目的のために参集されていました。それぞれの立場、思惑があるのを承知の上で、 一業者更には一個人として敢えて本音を少々出させていただきました。違和感をお持 ちの方もいらっしゃたのではないかと存じます。今後も少しばかりの本音の出せる場 をご提供いただけます様、お願い申し上げます。 (機器展示業者)  いつもながらロービジョン研究会のテーマは非常に興味深いものでありました。展 示会には多くの方が見学に来ていただきました。これも会の冒頭で機器紹介をさせて いただくという工夫を凝らしたプログラムのおかげと思いました。いつもながらに、 ご配慮いただき誠にありがとうございました。新潟ロービジョン研究会は毎年楽しみ にさせていただいております会ですどうぞ今後も末永く続けていただきたく思いま す。本当にありがとうございました。 (薬品開発研究、東京)  大きく3つのテーマ(ロービジョン患者さんのIT活用の事、網膜色素変性患者へ の告知の事、網膜(神経細胞)変性疾患の治療の事)で、勉強させて頂きました。い ずれも、私自身、日頃あまり勉強したり考えたりしていなかったテーマでもあり、勉 強したという事とともに、色々な事をすごく考えさせられた機会でもありました。今 回の各先生方のご発表をお聞きして、ロービジョンの患者さんは如何に多くの情報を より簡便な方法で入手すべくIT技術を活用されているのかを知りました(技術者の 夢と利用者の夢のコラボ)。 眼科ドクターは、如何にロービジョンの患者さんを増 やさないよう、告知の問題も含めて、初期の段階での診断方法と治療方法の確立が一 番の役割として仕事をされているのかを知りました。そして、我々製薬メーカーの仕 事は、眼科ドクターに使って頂ける有用な治療法のご提案・ご提供と共に、ロービ ジョンの患者さんに安心して安全に使用していただける医薬品(点眼容器の使用性の 高さもキーポイント)の開発・提供の両面での役割がある事を改めて勉強しました。 (当事者)  ロービジョン者として、参考になるお話ばかりでした。翌日の「学問のすすめ講演 会」も参加すれば良かったと後悔しました。 (眼科医;病院勤務、香川県)  新潟ロービジョン研究会では、大変お世話になりました。初めてのロービジョン研 究会は、大変有意義ですばらしいものでした。懇親会は、とても楽しかったです!新 潟の地酒美味しかったです。満喫いたしました(笑)。ありがとうございました!! (内科医:病院勤務、新潟県)  ”新潟ロービジョン研究会2012”の開催、お疲れ様でした。第一印象として、 素晴らしい会と感激しました。参加者皆様が熱く燃えていました。ロービジョンの 方々へ、如何に役に立つか、是非立ちたいとの思いが一杯詰まっている発表であり、 プレゼンであったからと思います。各メーカーのプレゼンにも、その思いが溢れてい ました。ITに付いての発表をお聞きしましたが、各演者ともに、日頃の研究の経過、 成果、工夫、活用…いずれも見事でした。目の見えるはずの私がなにも利用していな いのに、障害のある方々が工夫をして、立派に活用していることに感激し、敬服して 帰ってきました。今後の皆様のご活躍、ご発展に期待したいと存じます。 (眼科医;開業、東京)  大変お世話になり、誠にありがとうございました。素晴らしい演者の人選から、 アットホームなおもてなしまで、頭がさがります。敬服です。私は診療後に出発した ので、ご講演のいくつかを聞けずにもったいない事をしましたが、どうしてもお聞き したかった小川先生の告知のご講演の途中から聞くことができました。遅れていった ので、後ろの席になり、全体の様子が良く見えました。何人もの方が涙を流しながら お聞きになっていました。もちろん私も。 (当事者、兵庫県)  今回で2回目の参加です。前回も感じましたが、演者のみなさんも参加者も熱い想 いをぶつけてこられるので、今回も本当に参加させていただいて良かったと思いまし た。iPadはなかなか興味深いですね。そして、特に心に残ったのは「網膜色素変性の 病名告知」でした。 (工学研究者;大学勤務、新潟市)  とても充実した半日だった。一病院の主催する研究会に全国からこれだけの人が集 まり、充実した講演と熱い討論が聞ける会が他にいくつあるのだろうか。 (当事者、新潟市)  患者に対しての貴重な情報提供厚く御礼申しあげます 今後の更なる研究会のご発 展を祈念いたします (雑誌編集、東京)   作り手、作り手とユーザーの架け橋、ユーザー、医療従事者、様々なお立場からの なかなか聞けない貴重なお話を、とても興味深く聞かせていただきました。 (学生、新潟市)  今回のようにたくさんの視覚障害の方とご一緒したのは初めてだった。私が廊下で すれ違った視覚障害の方に「お手洗いですか?」と声をかけてトイレまで誘導し、ト イレの配置を教えている方がいた。私は何もせずすれ違い、困っていることにも気付 かなかったので思いやりがなかったなと思った。手を引いて誘導し、どこに何がある かを教える様子を見て、私も見習おうと思った。 (学生、新潟市)  今回の研究会では医学的な話だけでなく、医者としてのサポートや当事者の意見、 商品を通じてのサポートについて学ぶことができました。福祉職のサポート方法だけ でなく、他の専門職のサポートについてやサポートする上で使える道具について学ぶ ことができて、自分自身の知識の幅が増え、物事を広く色んな方向から見ることの大 切さを知りました。卒業後に福祉職に就いたら今回の経験は生かせると思います。長 い時間で少し大変でしたけど凄く良い時間を過ごせました。なかなかこのような機会 はないので参加できて本当に良かったです。 (学生、新潟市)  研究会に参加しての感想は、参加者が県内の人間だけでなく遠い県外からたくさん の眼科医や視覚障害者やその家族が参加しており、視覚障害者へのロービジョンケア の関心の高さを窺える事が出来、この研究会に参加する事が出来とてもよかったと 思っています。社会福祉士としてこれから多くの障害を持った人達と接していく事に なるので機会があればまたこういった障害者へのケアに関する研究会に参加してみた いなと思うようになりました。 (学生、新潟市)  専門医や患者が集う研究会はなかなか体験する機会がなく、会場の一体感のある空 気も体験することができ、福祉の分野を超えた知識や福祉との関連性について多くを 知ることができた。そして、会場にいた視覚障害の方々は、とても生き生きとしてい て自分の病気といかに向き合っているのかが伝わってきた。また、会場に来ている 方々はお客様ではなく、全員でこのロービジョン研究会を進行するというコンセプト も印象的で、一体感のある空間でのフィールドワークがとても自分にプラスになると 感じた。