報告『新潟ロービジョン研究会2012』 (3)シンポジウム1『ITを利用したロービ ジョンケア』  『新潟ロービジョン研究会2012』      日時:2012年6月9日(土)      開場12時45分 研究会13時15分〜18時50分   会場:済生会新潟第二病院 10階会議室 1.シンポジウム1『ITを利用したロービジョンケア』      座長:守本典子(岡山大学) 野田知子(東京医大)  1)基調講演(50分)    演題:「 ITの発展と視覚代行技術-利用者の夢、技術者の夢-」    講師:渡辺哲也(新潟大学工学部福祉人間工学科)  2)私のIT利用法(50分)    「ロービジョンケアにおけるiPadの活用」       三宅琢(眼科医:名古屋市)    「視覚障害者にとってのICT〜今の私があるのはパソコンのおかげ〜」       園順一 (京都福祉情報ネットワーク代表京都市)  シンポジウム1『ITを利用したロービジョンケア』は、ITを中心に、「作り手」 (渡辺)、「作り手とユーザーの架け橋」(三宅)、「ユーザー」(園)がそれぞれ にお話ししてくれました。シンポジウムの内容を座長報告として、そして参加者から の感想をお届けします。 シンポジウム1『ITを利用したロービジョンケア』座長報告              守本 典子 (岡山大学眼科)               野田 知子 (東京医科大学眼科)  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  このシンポジウムでは、渡辺先生の基調講演を受けて、お2人の講演と2題の質疑 応答がありました。なお、ITはInformation Technologyの略で情報技術ですが、最 近ではこれによるコミュニケーション(Communication)の要素を重要と考えること からICT(Information and Communication Technology)すなわち情報通信技術と 呼ぶことの方が増えているそうです(それで園さんは抄録でもご講演でもこの略語の 方を使われました)。当シンポジウムに関連しては、この2語を意味と思ってお読み ください。  三宅先生はApple社製の多機能電子端末であるiPadを用いた新しいロービジョンケ アの可能性についてご講演されました。近年のバージョンアップにより音声入力や音 声読み上げ機能が改良され、音声メールや地図のガイドなど、さらに使いやすくなっ たそうです。また、先生は2011年の日本臨床眼科学会でiPad本体の背面カメラを利用 した簡易拡大読書器としての有用性を報告されていますが、カメラの解像度の向上、 およびiPadを外出先で使用する際の固定台の開発などにより、さらに実用性が高く なったようでした。今回のご講演ではいくつかの便利なiPadの使い方をご紹介くださ いましたが、電子データの原稿を最適な文字サイズとレイアウトで表示される機能は 好評で、拡大読書器でしばしば困難とされる改行の問題もかなり解決されるのではな いかと考えられました。  このような背景を受けて、三宅先生はiPad関連の情報および視覚障害者向けの情報 発信を目的とした情報発信サイトGift Handsを設立され、iPadを活用するための様々 なアプリケーションの紹介や視覚障害者向けの各施設の案内等の情報を発信されてい ます。その他に、iPadの直営店であるアップルストア(銀座)ほか多施設で、視覚障 害者に向けたiPadの活用方法の体験セミナーを行うことで、より多くの視覚障害者に とってiPadが現実的なロービジョンエイドとして機能するかを実体験できるセミナー を企画されており、これらの活動の一部を報告されました。ご講演の後、固定台に iPadを設置してのデモンストレーションをされ、盛況でした。iPadの注目度がうかが えました。  園さんはお若い頃からの興味がお仕事にも結びつき、システムエンジニアとして生 計を立てられました。パソコンを使いこなして情報を収集、発信し、自身の日常生活 に役立てるばかりか、ロービジョン者のためのパソコン普及活動や機器展示会のお世 話などもして来られました。一般のパソコン教室ではキーボード中心の操作方法を教 えられないため、ロービジョン者を対象とした教室を開設し、指導者の養成もされた そうです。機器展示会への集客力は大変なものだった、とのことでした。また、ロー ビジョン者向けの機器の開発でも当事者としての提案をされ、例えば音声で電話をか けられるピッポッパロットができました。途中、園さんが日常、愛用されているス マートフォンや使い勝手を試してみられているiPadなどを取り出して、一部を披露 されました。最後に、「墨字での文字処理が困難なロービジョン者にとって、パソコ ンほど便利な道具はなく、自分はICTの時代になったからこそしたいことができ た」と括られました。  討論では、機器メーカーの方からの「音声パソコンの開発や普及を頑張って来た が、この調子ではパソコンはiPadに取って代わられるのか」というご質問に対して、 渡辺先生は「機能による使い分けをすればよくそれぞれが有用」、三宅先生も「iPad は携帯性に優れ、場所を選ばず使えるという点て有益だがパソコンにはパソコンの良 さがある」、園さんも「iPadではできないことがまだまだあり、多くの量をこなす仕 事ではパソコンが欠かせない」という風に、いずれも両者がぞれぞれの特徴を生かし た形で生き残り、ユーザーは便利に使い分ければいい、というお答えでした。また、 主催された安藤先生が「今回、講師が開発、普及、ユーザーとバランスよく3者揃っ た。今後、どのような展開を考えておられるかといった展望を一言ずつうかがいた い」と言われたのに対して、お3人とも現在の活動を継続し、より発展させていきた い旨のご回答をなさり、頼もしく思いました。 【参加者からの感想】到着順 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー (眼科医;大学勤務、東京)  iPadの活用(三宅先生):三宅先生の数々の講演に刺激されて、東大眼科のロービ ジョン外来でも5月にiPadを購入しました。私たちは患者さんに説明するほど使いき れていない面もあり、今後三宅先生にメールをしながら聞いていく予定です。今日紹 介された各種ソフトとも勉強になりました。これからのロービジョンケアにiPadは必 需品だと確信しました。  園さん:これだけポジティブにiPadを使いこなすロービジョン者はいないと思いま した。こちらが勇気づけられる思いでした。 (研究所職員、関西)  iPadが広げてくれる世界、可能性が十二分に伝わってきた。外出時に携帯用の拡大 読書器はカッコ悪くて出せなくても、iPadなら何の抵抗もなく出せる。流行や情報に 敏感な若い人も頑固なおじさんもこれなら使ってくれるかもしれない。アイデア次第 でまだまだ使い道が広がるiPadとApple社の顧客に対する思いがこれからの社会を変 えてくれそうな気がする。iPadが目の見えない人の記憶・思い出を作ってくれるとは 目からウロコの話だ! (眼科医;大学勤務、東北)  作り手、ユーザー(患者)、眼科医の話がうまく絡まりたいへん興味深かったシン ポジウムです。iPadは興味の対象外でしたが少し考えが変わりました。まず自分で利 用してみようかなと思います。 (機器展示業者、愛知県)  いつもながらロービジョン研究会のテーマは非常に興味深いものでありました。 ロービジョンケアにおけるiPadの活用は、これからの視覚障害補助具の可能性を広げ るものでした。 (当事者、千葉県)  三宅先生のご講演で、新たなデバイスの可能性に触れ、視覚障害当事者として、新 たな期待を膨らませた次第です。 (視能訓練士、新潟市)  ユーザーの方たちのたくさんの声を聞き、作り手の多くの方々の努力と汗の結晶で しょうが、iPadのように、一般の方たちと同じものを共有できる究極のバリアフリー 商品が他にも出来てくるといいですね。 (眼科医;病院勤務、四国)  技術は進歩し時代はiPadへ。「人は記憶の中を生きる」と訴えた三宅先生のお話し では、思わずiPadを手に取ってみたくなりました。「失明に向かう自分をワクワクし ていた」という園さんのお話しには、度肝を抜かれました。確実に一つのことを成し 遂げていく園さんの行動力には、学ぶべきことがたくさんありました。  どんなに便利な道具が存在しても、当事者にそれを使う意欲がなければ、それはた だのガラクタに過ぎません。たとえば視覚障がい者が、拡大読書器を使用して墨字を 読むことができたとします。拡大読書器がすばらしいのでしょうか?拡大読書器もす ばらしいですが、もっとすばらしいのは当事者の意欲だと思うのです。いくら読める といっても、そこには大変な努力があるということを支援者は知っておく必要がある と思います。 (教育関係者;大学勤務、関東)  三宅先生が,単にiPadの機能紹介にとどまらず,アップル社への交渉,一般利用者 への説明など,多方面にわたり働きかけている情熱がよく伝わってきました。次回 は,パソコンとの使い分け・連携についてもお聞きしたいです。  園さんは,視覚障害に対する告知を淡々と受容された,とのお話でしたが,告知を 受けた際に誰もが一度は自殺を考えるほどの絶望感を乗り越えられたエピソードをも う少しお聞きしたかったです。 (機器展示業者、兵庫県)  三宅先生のiPadの応用については、これからの時代はスマートフォンやiPadのよう なタブレットPCが文字拡大・OCR・音声認識など、視覚障害者にとって様々な可能性 を秘めた有効な機器であることを感じました。機器を選定する場合、利用する当事者 の用途、状態をよく考慮して勧めないと高額で、最新の機器であっても当事者にとっ て適正でない場合があります。比較的安価で、一般に普及している機器の用途の幅が 広がることはとてもすばらしいことであると思いました。 (薬品メーカー勤務、新潟市)  三宅先生:驚きの連続でした。知恵次第で目の不自由な人に感動を提供できること があるのだなと思いました。また、営利目的なしでツールを提供する三宅先生を尊敬 しました。ITを活用するのに抵抗を感じる人も多いと思いますが、こういったきっか けがあれば自分も挑戦してみようかなと思わせる三宅先生は素晴らしいと思いまし た。  園さん:以前、済生会眼科勉強会での講演を聴かせて頂きましたが、今回もパワフ ルな講演が聞けてよかったです。元々ITには精通している方なので、パソコンを活用 するのは何ら問題はないような気がしますが、パソコンを活用するというよりは、園 先生の根本的なプラス思考が働いているような気がします。また、情報に対する貪欲 さがひしひしと伝わってきました。ある情報を知らなくて損をすることも多々あると 思いますので、大変参考になりました。  全体を通しての感想:アイデアがあってそれを試行錯誤し、物を作り、活用すると いう流れは一見バラバラに思いますが、それぞれに共通していることは、目の不自由 な方にとって利益になるという思いだと思います。企業ではニーズとコストのバラン スが問われることがあると思いますので、福祉事業補助金等が充実すればよいなと思 います。署名運動等で行政が動くのを期待してます。 (当事者、長野県)  iPadの使い方には大変興味を持ちました。確かに今までのPCに比べてマンマシン インターフェースが格段にやさしくなりました。障害者に限らず高齢者にも使いやす いものだと思いました。これからこのようなものがますます発達していくと思います が、思わぬ使い方があるものだと感心しました。iPadには最初から視覚障害をサポー トする機能が入っていることも知りました。多くのメーカーがそのような取り組みを し、もっと普及するよう願っています。 (薬品メーカー勤務、新潟市)  三宅先生:iPadが他社製品と比べてレスポンスが早いこと、電子書籍では文字 の大きさを変えたり読み上げ機能が付いていること、音声入力が非常に感度が良いこ となど、iPadが目に不自由な方に使用しやすいことを学ぶことができました。ま た、三宅先生の言葉で、iPadが「見える」「読める」「書ける」だけではなく 「記憶」「情報」「想い」が可能になる。と仰ったことがとても印象深かったです。  園さん:「情報を知ることから始まり、情報を与える機会を提供する立場になっ た」と仰っていたのがとても印象的で、いかに情報が大切なものなのかを再度認識す ることができました。また、園様が実際に目の不自由な方々へのサポートを実施して いることから園様の考え方や人生観の大きさを感じることができました。 (内科医;病院勤務、新潟県内)  ITに付いての発表をお聞きしましたが、各演者ともに、日頃の研究の経過、成果、 工夫、活用…いずれも見事でした。目の見えるはずの私がなにも利用していないの に、障害のある方々が工夫をして、立派に活用していることに感激し、敬服して帰っ てきました。 (当事者、長野県)  今回の研究会に是非出席したいと思ったのは、ロービジョン者のiPad活用の可能性 を知りたいとかねてから思っていたからでした。店頭では教えていただけない活用術 を教えていただき、有り難うございました。私が現在使用している電子ルーペは、購 入以来、ほぼ2ヶ月に一回故障しています。障害者用に特定した物は、小規模に作ら れているためか品質管理が不十分ではないかと、私は不信感を抱いています。その 点、iPadだったら2ヶ月に一回故障するようなものは市場に出回らないだろうと言う 安心感もありますし、三宅先生のお話をお聞きして、iPadが私の要求に応えてくれる 事も分かりましたので、現在購入を考えています。以前から障害者を意識したタブ レットの実現を期待していましたので、三宅先生のような方の存在も大変嬉しく思い ました。 (眼科医;病院勤務、山形県)  iPadてすごいなと言うのが正直な感想です。若い視覚障害者のかただけでなく、年 配の方も使い方の説明次第では十分活用できると思うので、もう少し使い方の勉強を しないといけないと思いました。  園さんはいろんな情報をいつもメールでいろんな方に発信しており、まねできない 事だと思います。実際山形の網膜色素変性症の患者さんが、園さんにメールで現状の 相談をしているとの話もあり、パソコンは情報発信、収集にかかせないのだと思いま した。 (当事者;自営業、新潟県)  今年3月に発売された第3世代のiPadは、ロービジョン者も使いやすいように、画面 拡大、ハイコントラスト、大きなフォント、VoiceOver(音声読み上げ)などのアク セシビリティ機能をOSレベルでサポートしており、この機能を活用してロービジョン ケアにiPadを取り入れる試みが広がっています。眼科医の三宅琢先生の演題「ロービ ジョンケアにおけるiPadの活用」では、これらのアクセシビリティ機能の概要と、 iPadのカメラ機能に三宅先生が開発された外付けレンズを装着することで拡大読書器 として使う方法などが紹介されました。  私は今年の5月に東京にあるNPOが主催するロービジョン者のためのiPad講座を見学 する機会があり、三宅先生が開発された外付けレンズも含め実際にiPadの操作を体験 してみました。iPadの最大の特徴は銀行のATM同様にタッチスクリーンによる操作で すが、明るく解像度の高いRetinaディスプレイと画面拡大機能のおかげで、指でタッ チスクリーンに軽く触れる直感的な操作で、画面の拡大、白黒反転、音声による文字 入力も含めた音声アシスト機能が非常にスムースに使えることに感動しました。ま た、眼を凝らしてマウスカーソルを追う必要がないこともロービジョン者がiPadを使 う大きなメリットであると思います。ちなみにRetinaとは網膜という意味です。  三宅先生はパソコンにできることをより楽しく快適にできるマシンがiPadであると 表現されましたが、情報の取り出しやすさという点ではパソコンよりもiPadは確かに 優れており、ロービジョンケアでは残存視力がある子供向けの学習教材をデジタル化 してiPadで取り出すというような教育分野での利用が向いていると思いました。けれ ど、三宅先生が指摘されたような自宅ではパソコン、外出先ではiPadというような使 い方は、恐らく多くのロービジョン者はしないと思います。なぜなら、事前に落ち着 いてゆっくり調べて、頭に入れて臨んだほうが安心できるからです。ロービジョン者 がもっとも苦手なことは「その場での早い対応」です。これの唯一の解決策はそれを 社会の側が理解することであるわけですが、ロービジョンは特別なことではないと 人々に意識を変えてもらうきっかけを、iPad、アップルというネームバリューがもた らしてくれるかも知れないことが、iPadをロービジョンケアに取り入れる最大のメ リットなのかも知れません。  ロービジョンケアにおけるInformation and Communication Technologyシンポジウ ム最後の演題はロービジョン者の立場から、京都福祉情報ネットワーク代表の園順一 さんによる「視覚障害者にとってのICT、今の私があるのはパソコンのおかげ」でし た。15年前、視力を失った園さんが見えない生活を支えるために使い出したICT機器 の利用法と、ICT機器の便利さ、面白さを伝えるためにかかわってきた数々の活動の 履歴を語っていただきました。  ここ数年のICTの発展は、視覚障害者がこれまでひとりでは不可能であった様々な ことを可能にしてきました。スクリーンリーダーや画面拡大ソフトを使い、文書の作 成、印刷、電子メールの送受信、ホームページの観覧および作成、スキャナを使った 紙の文書や書籍の音声読み上げなど、園さんも指摘されるようにパソコンが視覚障害 者にとって情報障害を軽減する強力なツールであることは今や常識になりました。そ う考えると、視覚障害者はICTの恩恵を晴眼者以上に受けているのではないかと思え るくらいです。ところが、晴眼者に比べ視覚障害者のパソコン利用は依然として進ん でおらず、その大きな原因のひとつにサポートの難しさがあります。つまり、一般の パソコンユーザーが利用しているようなサポートサービスは「画面がふつうに見え る」ことを前提に提供されているため、視覚障害者には利用できないからです。  園さんの講演を聴いて最も印象に残ったのはICTの便利さ、楽しさを伝えたいとい う意欲です。サポートサービスがないという問題意識があるだけでは何も変わらず、 そこから自分たちに必要なサービスを企画立案し、お仲間と共に具体的な形にしてい かれたのは本当にスバラシイことだと思いました。  こういった当事者とボランティアの努力のおかげで、今では全国各地に視覚障害者 向けパソコン教室が開かれるようになり、特に中途視覚障害者が社会とのつながりを 保つという点において有効に機能していると思います。ただ、就労を前提としたパソ コンの操作技術、知識の習得という点では不十分で、一定レベルのカリキュラムを提 供できるフォーマルサービスの充実が必要ではないかと考えます。 (工学研究者;大学勤務、新潟市)  眼科医の三宅先生のiPad応用への情熱には圧倒され、当事者である園さんの長年の 技術開発と普及への努力には頭が下がった。今後、IT機器がロービジョン支援にます ます有効になっていくことを再確認できた。 (当事者、新潟市)  三宅・園両先生の 「ITの利用法」…iPadの活用法。 最初に三宅先生が会 場の参加者に「iPad」所有の有無を問われたのに反応し挙手された皆さんの多さ に驚きました。 昨今は利便性活用のメリットに大きなものも期待されますが、一方 で利用者側の知識・認識の不足によるトラブルにも課題があるものと思っていますが いかがでしょうか。 (眼科医;大学勤務、中国地方)  三宅先生には、柔軟な発想とすばやい実行力と溢れんばかりの情熱を感じました。 各地で引っ張りダコ状態であられるのも合点がいきます。ITにはとくに疎い私です が、「いいですよ〜」と宣伝している手前、早くロービジョン外来に取り入れなけれ ば、と思っています。  園さんにはいきなり「この度の新潟行きの切符の購入も自分がしました。こんなこ とができるのもICTのお陰です」と皆の前で暴露されてしまいました。実際、「一 緒に行ってもらえますか?京都からの切符は僕が買っておきます。先生は岡山〜京都 間の往復だけ手配してください」という調子でしたので、私は京都で園さんと合流す ることだけを考えればよく、当日も園さんの盲導犬ならぬ盲導人間となって、会場ま で連れて来ていただきました・・いえ、ちゃんと私がお連れしたのですが、指示を出 し、誘導したのは園さんでした。新幹線ではリュックサックから出るわ出るわのIT 機器・・私は講演前からカルチャーショックに見舞われていました。  討論時間の質疑応答であったパソコンとiPadの両立(ユーザーによる使い分け)お よび両者の今後の発展に、さらなる期待と希望を抱かせてもらえました (雑誌制作、東京)  三宅先生のお取り組みを初めて伺い、大変驚きました。眼科の先生でありながら、 iPadという最新技術を取り入れてロービジョン支援を組織的に展開されていること。 それを広めるための精力的で画期的な活動の数々。  園さんのご発言にあったデスクトップとの棲み分けの話なども現実的で参考になり ました。  希望する人がスムーズに講習を受けチャレンジし環境を整えられるような仕組み が、ますます広がりますようにと、期待に胸が膨らみました。 (学生、新潟市)  視覚障害者向けに作られたIT技術の歴史の長さ、そしてさらに発展されたiPadの 普及により視覚障害を持った人たちの活躍する場は段々広がっているのだと感じる中 で、IT企業や技術者が利用者のニーズに合わせた工夫を行う視覚障害だけに限らず 様々な障害を持って暮らしている人達にも気軽に使う事が出来るようになれば障害を 持った人達の活躍する場面はもっと増えるのではないかと考えられるように思いまし た。 (学生、新潟市)  私が特に興味を持って聞けたのが「ITを利用したロービジョンケア」である。主に ipadを利用したロービジョンケアには驚きが多かった。私もiphoneを利用している が、知らない機能を多く知ることができた。使いこなす事さえできれば、視覚障害者 にとって最大のツールになり、ロービジョンケアの発展にも大きく影響を与えると感 じた。また、見えなくてもうまく利用することさえできれば、コミュニケーションを 十分図ることのできるものであるということも学ぶことができ、とても興味深い印象 だった。 (学生、新潟市)  ITの発展・利用法では、音声合成装置の今までの変遷や、音声合成装置等を使って 任意に文章を作成その他多くのことができるようになり、視覚障害を持つ方でも社会 に出て活躍できるようになったことや、iPadを活用した視覚に障害を持つ人への支援 方法があり、読書の字の拡大、映像を通して遠くの人と顔を会わせることができる 等、多くの機能が開発されていることを知りました。特に地図検索の際に地図の先の 町の様子を映像で見る事ができる機能は外にあまり出歩かない視覚に障害がある人に とっても大いに活用できるため、推進していき、多くの人が外に積極的に出て、社会 に関わっていけるようになって欲しいと感じました。 (当事者、新潟市)  日進月歩のIT関連分野のお話では、張替先生からの勧めもあり使い始めたiPA Dでは、三宅先生の活用法の講演は視覚に障害があるなしに関わらず、こんな便利な 使い方がありますよ!また、もっと使いやすくするためには自分で企画設計して便利 グッツを作ってしまうほど使いやすさを究極まで追い求めて、その反応を次の商品開 発に役立てていらっしゃるようで、今後も視覚障がい者が情報困難者にならないよう にご尽力くださることを期待しつつ私なりにいろいろな分野で使っていきたいと思っ ています。 (眼科医;病院勤務、新潟市)  ITを中心に、「作り手」「作り手とユーザーの架け橋」「ユーザー」がそれぞれに お話ししてくれました。スクリーンリーダーの開発に携わった渡辺先生の音声合成器 の開発、大きな驚きでした。実演は記憶に残りました。三宅先生は、「視力じゃない  記憶だ」「記憶 情報 想い」金言を取り混ぜた印象に残るプレゼンテーションで した。園さんの(失明に向かう自分をワクワクしていた)と言うコメント、毎回です が凄いなと思いました。  会でもコメントしましたが、作り手/架け橋はユーザーのニーズを如何に聞き出す (探り出す)かがポイントだと感じました。またユーザーは如何に思いを作り手に伝 えるかが大事と思います。ただ、製品となると採算がとれるのかが企業側としては欠 かせない点ですので、現在の現物支給の福祉行政そのものが問われなくてはなりませ ん。