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ブラインドメイクは、世界へ

報告:第251回(17‐01月)済生会新潟第二病院眼科勉強会 大石華法

演題:「ブラインドメイクは、世界へ -視覚障害者である前に一人の女性として-」
講師:大石 華法(一般社団法人日本ケアメイク協会)
日時:平成29年01月11日(水)16:30 ~ 18:00
場所:済生会新潟第二病院 眼科外来
http://andonoburo.net/on/5511

講演要約

 視覚に障害がある女性を対象に、自分自身で鏡を使わずにフルメーキャップができる化粧技法「ブラインドメイク」を考案したことをきっかけとして、2010年10月10日よりケアメイク活動をスタートし、6年間の活動を経て、2016年12月5日に一般社団法人日本ケアメイク協会を発足しました。
 今、「ブラインドメイク」は、日本の視覚障害女性の笑顔支援に留まることなく、世界の視覚障害女性の笑顔支援につながっています。

1.視覚障害者に化粧は不要か?
 「視覚障害者に化粧のニーズがあるのか?」「化粧をしても目が見えないのに、化粧する意味があるのか?」「目が見えないのに、化粧をさせるとは無茶なことだ」「そもそも彼女たちに化粧の話をすることは(出来ないのに)失礼なことだ」など意見が飛び交うなか、視覚障害の女性は、視覚に障害があるけれども「女性」であることに晴眼者の女性たちと何ら変わりはない。女性は死んでも死化粧をする。そこまで化粧は女性にとって重要なものとして扱われている。化粧は女性の尊厳を支えるアイテムであると言っても過言ではないと考えました。そのため、視覚に障害があることで、本当に化粧を諦めてもいいのだろうか?しなくていいのだろうか?それが本当に彼女たちの望んでいることなのだろうか?いや、そんなはずはない。私と同じ「女性」なのだから。と自問自答を繰り返す日々が続いていました。

2.視覚障害者理解不足が「障害」に?!
 ある日、一人の視覚に障害のある女性が「私はいつか目が見える時がきたら、化粧をしたいの・・・」と言って、1本の口紅を鞄の中に入れて持ち続けている女性の姿を見て、視覚障害の女性は目に障害があっても「女性だ!」と強く認識しました。
 それからは、視覚障害の女性と出会っても、同じ「女性」のスタンスで接することで、「目が見えない人」ということが気にならなくなりました。それどころか、一緒に“女子トーク”を楽しみ、“視覚障害者のアルアル話”を彼女たちとするようにまでなりました。
 ここで分かったことは、視覚障害者は、確かに身体の目の部分に「障害」はあるけれども、晴眼者側に視覚障害者理解が足りておらず、その理解不足の部分が、各自の思い込みや先入観(私はこのことを晴眼者側の「障害」と呼んでいます)を作りだしているのではないかということでした.。

3.女性の「美しくなりたい」という気持ちに寄り添う
 ブラインドメイクを指導する化粧訓練士の研修生たちに「視覚障害者と同行している時に、目の前に階段とエレベーターとエスカレーターがあれば、援護者はどうしますか?」と質問します。そうすると、「エレベーター」「エスカレーター」と、身体に負担が少ない、あるいは、容易に行く方法を考えます。しかし、答えは「本人に尋ねる」がよいことを話します。そして、目の前に「階段」「エレベーター」「エスカレーター」があるという情報を提供することの大切さを教えています。この回答を述べると、皆が「そっか!」と認識します。つまり、どうするかは援護者側が勝手に良かれと思ったことを実行するのではなく、本人にまず情報提供をして、本人が決めるという自己決定を尊重することの意味を話します。
 そして、次の質問では「視覚障害の女性はお化粧するしないは誰が決めるのでしょうか?」それは「本人」が決めることで、周囲が勝手に視覚障害者は化粧を「する」「しない」「できる」「できない」を決めるのではないことの理解を深めていただいています。
 最後に、「よく『当事者の気持ちに寄り添うことが大切だ』と言われていますが、視覚障害の女性の気持ちに寄り添えることは何でしょう?」という部分に触れます。回答は、「視覚に障害がある前に、その人を一人の『女性』であるということ。女性であるならば『美しくなりたい』という気持ちがあることを、認識して理解すること」と述べています。これらの回答は、ブラインドメイクができるようになった視覚障害の女性たちが、ケアメイク女子会で述べていたことを参考にしました。

4.「ブラインドメイク」は世界へ
 「ブラインドメイクは我々医療では手の届かない患者さんを笑顔にする不思議な力を持っている」と安藤伸朗先生(済生会新潟第二病院)は、仰ってくださっています。ブランドメイクは、単に視覚障害者が鏡を見ないで、綺麗にフルメーキャップすることができる化粧技法のみではなく、“笑顔”につながっています。その笑顔は、見ている晴眼者の顔にも“笑顔”にする力があります。ブラインドメイクは「笑顔支援」だと言っていますが、その笑顔支援は今や国境を越えて世界へ広がっています。
 それはなぜでしょう?世界にいる視覚に障害のある女性たちも、障害がある前に、一人の「女性」だということです。

プロフィール

大石華法(おおいし かほう)
大阪府生まれ。日本福祉大学大学院福祉社会開発研究科社会福祉学専攻博士課程。高齢者・認知症患者・視覚障害者・精神障害者を対象とした、化粧の有用性に関する研究を行っている。
主な研究論文に「ロービジョン検査判断材料としてのブラインドメイクの検討」「Family Support for Self-realization of the Visually Impaired Woman with Hereditary Blindness in a “Blind Makeup Lesson Program”」など。
一般社団法人日本ケアメイク協会理事長。

日本ケアメイク協会:http://www.caremake.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/caremake
活動履歴 http://www.caremake.jp/?page_id=42

過去の勉強会

本勉強会で「ブラインドメイク」の講演は3年連続
2年前この勉強会で、大石華法さんにブラインドメイクの講演をして頂き、昨年は岩崎さん・若槻さんが講演。今回の大石さんの講演で3年連続になります。下記ご参照ください。

報告:第228回(15‐02月)済生会新潟第二病院 眼科勉強会
演題:「視覚障害者の化粧技法について~ブラインドメイク・プログラム~」
講師:大石華法(日本ケアメイク協会)
日時:平成27年02月4(水)16:30 ~ 18:00
場所:済生会新潟第二病院 眼科外来
http://andonoburo.net/on/3418

報告:第240回(16-02)済生会新潟第二病院眼科勉強会 若槻/岩崎
演題:「ブラインドメイク 実践と体験」
講師:岩崎 深雪(新潟市;盲導犬ユーザー)、若槻 裕子(新潟市:化粧訓練士)
日時:平成28年02月17日(水)16:30~18:00
場所:済生会新潟第二病院眼科外来
http://andonoburo.net/on/4538

後記

 新潟で行われた勉強会にもかかわらず、わざわざ大阪と神戸から2名の参加があり、地元新潟の化粧訓練士・訓練生・視覚障害者を加えた5名が会場前方で揃ってブラインドメイクの実演、まさに壮観でした。
 講演もパワフルで大石節全開でした。今回の講演で、ブラインドメイクのことを「たかがお化粧」などと言ってはならないことを再度確認できました。それまで家にこもりがちだった視覚障害の方が、お化粧することで生き生きとしてきて、本人が変わるだけでなく、家庭も地域も明るく変えるのです。また認知症の方へのメイクが効果あるというお話も新鮮でした。ケアメイクをするようになって娘さんと女子トークが出来るようになったというお話にも感動しました。これは実際にそういう方を見てみないと分からないのですが。私自身、新潟の視覚障害をお持ちの女性が、ブラインドメイクのお蔭で、どんどん見違えるように活発になっていくさまを目の当りにして、感動しました。
 まさに医療ではできない笑顔を取り戻すことを可能にする魔法だと思いました。大石さんの、一般社団法人日本ケアメイク協会のブラインドメイク、ますますの発展を応援したいと思います。

大石先生から下記伝言がありました。

「書籍出版のご支援をお願いします」
現在、ブラインドメイクをマスターした視覚障害の女性たち10名に「ブラインドメイク物語、それぞれの想い」を執筆してもらってます。
・「目が見えなくても化粧ができた!」彼女たちの想いを本にしたい!
(執筆:大石華法・「ブラインドメイク」体験者10名 136ページ予定
価格:3,240円(税込)判型:A5判 株式会社メディカ出版 fanfare企画)

300冊購入支援者がいれば、書籍になるそうです。
何冊でも結構ですので、ご支援お願い致します。
下記URLから支援登録が出来ます。
https://fanfare.medica.co.jp/book/projects/ohishi/

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